雨谷の日和

過去20年で2,700を超えるアニメの第1話だけは見続けた僕のお勧めアニメがハズレなはずがない

環境危機をあおってはいけないらしい

この本を読了。ようやく読了。


確かこの本を読み始めたのと同時期に、アニメ「宇宙のステルヴィア」を見ていて、なんか主張の方向性が似てるなぁというような感想を抱いた記憶があるので、恐らく読み始めてから読み終わるのに約1年くらいかけてしまった計算に。うわぉ。俺、本、読むの、遅い、ホブゴブリン。
……どっちかってーと俺、速読気味なんだけどなぁ。年取って衰えたのかなぁ。だいたい、この一年間でまともに読んだ本って、これだけだよなぁ。新婚旅行にも持っていったけど、結局読み切れなかったんだよなぁ。
でもまあ、そもそも妻の人の読書速度にはぜんぜん追いつけないのですが。連邦の読書家はバケモノか。


今日は待ち時間がいっぱいあったので、ゆっくり読めました。まる。


どっかで何回か書いているように、僕は育ちが物凄く左翼的なので、大学を卒業してからは努力して右翼的な考え方とかいわゆる保守本流と呼ばれる考え方とかを勉強して個人的な思想背景のバランスを取ろうと試みているわけで、なので左翼的(暴力革命派や議会革命派など色々)、右翼的(伝統的な保守派、宗教的勢力などこれも色々)といった分け方をあえて好んで使ったりするんですが、そういう見方からするとこの本は保守本流の主張にかなりの裏づけを与える内容であるようにも見えました。
それが好きかどうかは別として。


基本的に、私の知識の中で環境問題というものに関わっている人々の立場には色々なものがあって、それは例えば実際の公害の被害者だったり、環境汚染を知りながらその影響による健康被害を無いと言い張る人々だったり、環境問題そのものをまじめに学問している学者さんや学生さんだったり、環境問題そのものを食い物にして分かりやすい脅しとパフォーマンスに人生を捧げている人々だったりするわけですが、本書はそれらの全ての人にとって、何らかの知見をもたらしてくれるものになっているような気がしました。それだけ、豊富で総括的な内容を持っています。作者の思想的な主張に対する好き嫌い(かなり中立的ではあっても)は別として。
あ、でも実際の公害の被害者にとっては、本書はどうでもいいものかもな(もう起きてしまったことについては、本書のようなものは役に立たないから)。


本書は環境問題として取り上げられている様々な現象の、世間での認識の元となっているデータ(主にそれは過去の統計資料)について、その統計の見方の示唆とそこから導き出される「常識的な」結論を列挙しているだけのものです。
ただ、その量と質と広範さがこれまでの環境問題の本に比べると圧倒的で、それだけでお腹一杯になりますが。これ、大学の講義とかで一年かけて教える価値とか有りそうだよな。
「常識的な」結論を主張する過程で、一般的に世間で認識されている誤解を指摘している(例えば、地球の温暖化が進むと南極の氷が溶けて海面が上昇するとかいう認識について、実際の観測データをもとにそんなことはありそうにないよ、と指摘するとか)ので、素直に読めばトリビアに満ち溢れたものにも見えます。
例えば、「京都議定書に基づく努力を100年間行った場合の成果は……地球の温暖化を6年ほど遅らせる」とか。ええ、私はゲラゲラ笑いながら読んでましたよ色んな意味で。だって、面白いじゃん。6年て。


とりあえず、この本の中で僕が重要だと思った項目を以下列挙しておしまいにします。なんか長々と書いちゃいましたね。

  • 大きな問題を一つ解決すると、それまで隠れていた小さな複数の問題が浮かび上がる。
  • 複数の問題の解決を目指す場合、それぞれの幸福への影響度合いと問題解決にかかるコストのバランスをもとに優先順位を設定して取り組むのが近道である。
  • 人類社会は現状、様々な問題に直面しているが、ある国が取り組むべき優先課題はその国の経済的裕福さによって異なっている。
  • 発展途上国では、貧困と飢餓が最優先課題である。そしてこれは、先進国がかつて実践した解法により、比較的低コストでの解決が見込まれている。
  • 先進国では、健康問題(微粒子とかタバコとか)が最優先課題である。これは現在、かなりの進捗で改善されつつある。
  • 環境問題は、それらよりも優先度としては低いものが多い。そして、その解決にかかるコストは現状の優先課題にかかるそれと比較して莫大とも言える額が見込まれている。
  • 環境問題は確かに重要だが、それを実態以上の危機として煽ると、世間は恐怖を感じる。恐怖は優先課題に費やすべきコストが環境問題に投入されるような事態を呼び、結果として人類全体の進歩の足を引っ張るのではないか。(ここら辺は、作者の主張)

興味の湧いた方はどうぞ。無駄に環境問題に詳しくなること請け合いです。こんな感想文で読みたいと思う人が出てくるとは思えないけどなー。


(ていうか読み返してみたら本当に長いなコレ。もう少しまとめて、雑文の方であげるべきだったか。まあいいや)